予防獣医学観点の愛情のかけ方

お客様扱いしていませんか?

当院の最大の特徴は、飼い主さんに「正しい愛情のかけ方」を指導していることです。

 

ペットをお客様扱いして、必要以上に気を遣っていませんか?そんな関わり方を続けていると、ペットは気を遣ってもらえない状況になると急に免疫力が落ちるようになり、様々な病気にかかりやすくなります。つまり、病気の予防に逆効果なのです。

 

ペットには、「家族」として接して下さい。お客様扱いすることと家族を尊重することを混同しないで下さい。特にワンちゃんの場合、ワンちゃんのほうから飼い主に気を配って、自分で考えて行動させることが重要です。こうすることでワンちゃん自身に家族の一員としての自覚が芽生え、病気予防にも効果的です。

 

「病気」に向き合わないで

最近の若い獣医師は、治療法や薬の使い方について非常に熱心に勉強しています。しかし、熱心であるほど「動物」ではなく、「病気」にだけ向き合っている傾向があるように感じます。動物が好きだという気持ちから獣医師を志したはずなのに、勉強するほどいつの間にか「こんな症例が来ないかな」と期待するようになり、「病気が好き」になっていることがあるのです。

 

病気とばかり向き合っている獣医師は、治療の選択肢が狭まるものです。学んだ治療法にとらわれて柔軟な対応がとれなくなったり、データが集まらないと打つ手がないと感じてしまったりするためです。動物について知らない獣医師が、予防獣医学を実践することは非常に難しいと言えます。

 

実は、動物に向き合えていないのは獣医師だけではありません。飼い主さんにも同じことが言えるのです。最近の飼い主さんは、病気について一生懸命ネット検索してから病院に来られます。すると「うちの子はネットで見かけたこの病気だ」と決めつけていて、私が食事を変えれば治るとアドバイスしても納得してもらえないことがあるのです。

 

「ペットを病気にしたくない」「早く治してあげたい」と思うなら、動物そのものにきちんと向き合う姿勢が重要です。

 

高齢のペットの治療

ペットは、長生きするほど病気のリスクが高まります。しかし、動物病院の中には「麻酔をかける治療や手術ができない」といった理由で、高齢のペットを受け入れない施設もあります。

 

私は、高齢のペットに対して「長生きしてくれてありがとうね!」という気持ちで、できる限りの治療をすべてやるのが獣医師だと考えています。

 

以前、当院で18歳のダックスフントを治療したことがあります。その子は頬から歯が見えるほどのひどい歯周病でしたが、高齢を理由に他院で治療を断られたそうです。しかし、その子と飼い主さんをこのまま辛い状態で放っておくことはできないし、飼い主さんも高齢だったので歯周病菌の影響も心配でした。

 

そこで当院では、ワンちゃんに負担をかけないように慎重に手術を行い、さらに1週間の入院で投薬しながら治療しました。治療中は病院中ひどい臭いになり大変でしたが、ワンちゃんはきれいに治って無事に飼い主さんの元に帰ることができました。高齢だから治療ができない、ということはないのです。

 

また、高齢のペットほど予防が重要です。時々「もう年だからワクチンはいらないでしょ」とおっしゃる飼い主さんがいらっしゃいますが、人間の高齢者と同じように高齢のペットほど予防を徹底すべきです。

 

しつけを重視する理由

私は予防獣医学の考え方から、ペットのしつけは飼い主さんにはかなり厳しくお願いしています。しつけの最終目標は、「動物たちがすべてに対して幸せを感じること」です。

 

このようにしつけられたペットは、免疫力が上がって病気になりにくくなります。また、もし急に食事をとらなくなっても、ワガママで食べないのか本当に具合が悪いのか明確に判断できるようになり、病気の早期発見に役立ちます。普段は「食事をもらって幸せ!」と感じて食べているペットなら、食べなくなればそれは病気なのです。

 

しつけが行き届いて正しい愛情のかけ方ができていると、ペットは病院の注射すら幸せだと感じるようになります。このような状態なら、病気になっても積極的な治療が可能です。

 

ワンちゃんの場合、予防接種やフィラリア予防をしておけば怖い病気はほとんど防げます。それでも病気になることが多いなら、飼い主さんの勘違いで愛情のかけ方を間違っているのです。しつけができていないと治療食は食べてもらえませんし、点滴治療も困難になります。

しつけ指導で病気が治った

以前、歯周病で顔が腫れ上がった柴犬が当院にやってきました。この子は触っただけで「ウー!」と吠えてしまい、人との触れ合いにすら幸せを感じることができなくなっていました。

 

なぜ歯周病になったのか飼い主さんに聞いてみると、ワンちゃんがドライフードを食べなくなったので缶詰や人の食べ物を与え、それも食べなくなったので調理で味つけをして与えていたというのです。グルメの文化は人間のためにあるもので、ワンちゃんには必要ありません。飼い主さんが正しい愛情のかけ方を知らなかったために、ペットが病気になったのです。

 

この子は触ると吠えるので治療を行うことが難しく、心臓が肥大していたので麻酔も不可能でした。そこで、抗生物質で炎症を抑えながら、予防獣医学の考え方に基づきしつけ指導を行いました。

 

お願いしたしつけ指導は、食事と散歩だけです。ワンちゃんが美味しくないと思っているドライフードの食べ方のしつけでは、まずお皿にドライフードを1つ入れ、飼い主さんが「食べるの?食べないの?」とワンちゃんに話しかけます。ペロッと食べたら「ありがたいと思いなさいね」と言って終わりにします。そして食事の度に2粒、3粒…と量をだんだん増やしていきます。これを正規の食事量になるまで続けるのです。この方法でワンちゃんに、「飼い主さんに食事をもらえて嬉しい」という気持ちが芽生えていきます。(※正しい散歩についてはこちらをご覧下さい)

 

飼い主さんが頑張ってくださったおかげで、2ヶ月もすると誰が触っても喜ぶワンちゃんに変わり、大人しく治療を受けてくれるようになりました。最終的にこの子は20歳4ヶ月まで元気に生きてくれました。しつけ次第でペットの寿命や幸せが大きく変わることを改めて感じた症例でした。

 

可愛い子には旅をさせよ

人間の子育てには、「可愛い子には旅をさせよ」という言葉があります。これはペットへの愛情のかけ方においても同じようなことが言えます。つまり、その子の将来を考えた時、心を鬼にして指導・管理すべきポイントがあるということです。

 

診察の際、ペットに「怖いね~」「痛いね~」と声をかける飼い主さんがいらっしゃいます。しかし、このような飼い主さんは愛情のかけ方を間違っています。こんな風に声をかけられたペットほど不安になって逃げ出したり暴れたりするのです。

 

正しく愛情をかけるなら、飼い主さんが「親」の顔をしっかり持ち、「私がいるから大丈夫よ」と毅然と振る舞うことです。信じられないかもしれませんが、これだけでペットは驚くほど変わります。実際に、当院に通うペットたちは、ワンちゃんもネコちゃんも混在する空間でも、どの子も落ち着いて治療を受けています。

 

また、ワンちゃんの飼い主さんは、散歩の際に100%ワンちゃんの好きなように歩かせていませんか?飼い主さんはちゃんと散歩をさせているつもりでも、その散歩のやり方では実際はワンちゃんの幸せにつながっていないのです。(※正しい散歩についてはこちらをご覧下さい)

 

正しい愛情をかけたくても、飼い主さんご自身でご判断・解決できないこともあるかと思います。困った時はいつでも当院へご相談下さい。

ご相談はお気軽に

ペットのことでお悩みがございましたら、おゆみ野動物病院まで。

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